アシタカは蝦夷、ということでまずは蝦夷について調べてみる。

ところで、蝦夷で史上最も有名なのは誰か?といえば、まぁ阿弖流為だろう。

阿弖流為に関する書籍は多く、蝦夷そのものについても併せて言及した作品も少なくない。

そんな阿弖流為ひいては蝦夷研究の入門として高橋克彦歴史小説『火怨』を選んだ。理由は、『日本史はこんなに面白い』での半藤×高橋対談が面白く高橋克彦という作家が気になったから、はじめは小説で楽しく学びたいと思ったからである。

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

日本史はこんなに面白い (文春文庫)

日本史はこんなに面白い (文春文庫)

小説とかフィクションじゃんwwっていう反論もあるかもしれない。
しかし!
歴史小説を単なる史実を元にしたフィクションと侮るなかれ。
歴史小説は新説を紹介するエンタテインメント論文である。どや!

確かに書いてあることまるごと信頼に足る新説かと言われれば、もちろん違う。
しかし、どの部分が小説という体裁を取るために織り込んだ脚色かは、およそ分別があれば明らかに分かることだ。


さて、高橋克彦の『火怨』における蝦夷論はというと以下のようなものであった。

大和朝廷に追い出され差別を受けた蝦夷が、蘇我氏との政争に敗れた物部氏と手を組むというのが何とも興味深い。

それはともかくとして、この小説、一貫して蝦夷目線で書かれているのがまことに斬新であった。かつてこれほどまでに蝦夷を人間的に描いた物語があったであろうか…!?

中曽根康弘よろしく「日本は単一民族国家」だという考えが無意識の内に今日の僕たちにも刷り込まれている。
しかし、遥か昔には大和民族に弓を引いた民族がいたという事実を『火怨』はあらためて教えてくれる一冊であった。